デジタル技術の進歩や法制度の変化に伴い、人材紹介・派遣業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が高まっています。
特に、有料職業紹介事業や人材派遣業では、営業担当者が属人的な手法で求職者対応を行っているケースが多く、これが業務負担の増大や非効率につながっています。
実際、求職者と企業のマッチングや面接日程の調整など、多くのプロセスがアナログ作業に頼りがちで、こうした属人的な業務を放置すると時間と労力を消耗し利益率の低下を招く恐れがあります。
人材業界のDX推進においては、求職者や企業との接点のデジタル化、マッチング高度化、業務プロセス自動化といった領域が重要になると指摘されています。
本記事では、現場目線で営業担当者の負担を軽減する具体的なDX施策を、営業プロセスの流れに沿ってステップバイステップで解説します。
営業担当者の属人的業務による課題

人材紹介・派遣会社の営業担当者は、企業と求職者の橋渡し役として多岐にわたる業務を担います。
しかし現状では、以下のような課題が見られます。
- 情報管理の属人化: 求職者のプロフィールや応募状況、企業の求人内容などの情報が各担当者ごとにエクセルやメモでバラバラに管理され、社内で共有・検索しづらい。
結果として管理が煩雑になるだけでなく、最適なマッチング機会を逃す可能性があります。 - コミュニケーション負荷: 候補者への連絡(求人紹介、面談調整、結果連絡など)や企業とのやり取りがメール・電話に頼りきりで、担当者個人の対応力に委ねられている。
問い合わせ対応や日程調整に多大な時間を要し、担当者の負担が大きい。 - マッチングの属人性: 応募者の希望やスキルを担当者がヒアリングし、手作業で求人票と照合してマッチングしているため、担当者の経験や勘に頼った選考になりがち。
膨大な候補者・求人の中から最適な組み合わせを見極めるのは難しく、属人的な判断ゆえのミスマッチも発生しうる。 - 事務・手続き業務の負荷: 応募書類の管理や契約手続き、派遣スタッフの勤怠管理など、定型的な事務作業が多く発生します。
従来、労働条件通知書や派遣契約書などは紙での交付が法律上求められていたため、人手による紙対応が不可欠でペーパーレス化が進まず、契約関連の処理に時間を取られてしまう。
以上の課題により、営業担当者は本来注力すべき企業・求職者へのコンサルティングやフォローよりも、事務的な作業や調整業務に多くの時間を割かれてしまいます。
属人的な対応に依存していると、担当者が不在になった際に業務引き継ぎが困難になるリスクも抱えています。
では、これらの課題をどのようにデジタル化(DX)で解決していけるでしょうか。
次章から、営業プロセスの各ステップでの具体的なDX施策とその効果を見ていきます。
DXによる営業プロセス改善のポイント
営業担当者の業務負担を軽減し、生産性とサービス品質を向上させるために、以下のステップごとにデジタル化のポイントを解説します。
ステップ1:求職者・求人データの一元管理と共有

まず着手すべきは、情報の一元化です。
自社の登録求職者情報や企業の求人情報が担当者ごとに分散管理されている状態では、管理が煩雑になるだけでなく最適なマッチングの機会ロスにもつながります。
そこで、ATS(応募者管理システム)やCRMツールを導入して求職者データ・求人データを統合管理することが重要です。
情報をクラウド上で一元管理すれば、担当者間で候補者の履歴や選考状況をリアルタイムに共有でき、属人管理の弊害を一気に解消できます。
例えば、社内の蓄積データを集約・分析するBIツール、顧客(企業)情報や求職者プロフィールを共有できるCRM、見込み候補者の管理・アプローチを自動化するMA(マーケティングオートメーション)等のツールを組み合わせて活用することで、あらゆる情報を有効活用できる基盤が整います。
各種ツールを連携させてデータを繋げれば、応募フォームから自社DB(データベース)への登録や社内チャット通知まで一連の情報連携も自動化でき、どのフェーズでも必要な情報にすぐアクセス可能です。
情報の一元管理により重複入力や抜け漏れが削減され、担当者は探す時間を減らしてコア業務に集中できるようになります。
結果として業務効率化が進み、新たなビジネスチャンスの創出にもつながるでしょう。
ただし、「高度なツールを導入しても使いこなせない」そんな懸念もあるかと思います。
その際は、エクセルやスプレッドシート、LINE worksなど比較的馴染みのあるツール同士を連携させて業務の自動化をする方法もあります。
詳しい方法は、「オートラクボ」にお問い合わせください。

ステップ2:見込み求職者の獲得・育成のデジタル化

次に、候補者を効率的に集める仕組み作りです。
従来、求人募集や求職者のフォローは営業担当者による個別対応が中心でした。
しかしDXにより、このマーケティング部分の自動化が可能です。
具体的には、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用して、求人サイト経由の新規登録者や過去に接点を持った見込み求職者に対し、自動で情報提供・フォローを行います。
例えば、登録だけしてまだ応募に至っていない求職者に対し、希望条件にマッチした求人情報やキャリアに役立つコンテンツを定期配信するといった施策です。
これにより、担当者が一人ひとり手動で連絡しなくても、候補者の囲い込み(ナーチャリング)を継続できます。
また多くの有料職業紹介や人材派遣の会社では求職者の履歴書や職務経歴書の作成サポートも行なっているかとおもいます。
そしてこの業務に時間を取られている方も多いのではないでしょうか?
履歴書や職務経歴書を自動作成、添削自動化も効果的です。
例えば、 弊社のサポート企業では、求職者から届いた履歴書や、職務経歴書をAIに読み込ませて、自動で精度の高い添削を行い、再編成してアウトプットしています。
その結果、大幅な工数削減を実現し、営業はより付加価値の高い業務に注力できるようになりました。
他にも求職者との面談記録を自動で生成できるAIを導入し、それを顧客管理システムと連携させ、議事録のアップロードまで自動化しました。
自動生成されたこれらの書類はは人為的ミスも減り、品質向上、営業の工数削減だけではなく、管理者が都度営業担当に求職者の状況確認する工数の削減にもつながっています。
こうした候補者獲得段階のDXによって、より少ない人的リソースで多くの求職者を集め、関係構築を図ることが可能になります。
ステップ3:マッチング業務の高度化(AI活用)

候補者と求人のマッチングは人材紹介・派遣会社の核となるプロセスですが、従来は担当者の経験や勘に依存していました。
膨大な求職者データと求人票の中から最適な組み合わせを探す作業は時間と労力がかかり、属人的な判断によってミスマッチが生じるリスクも否定できません。
DXのポイントは、このマッチング業務にデータとAIの力を活用することです。
例えば、リクルート社が運営する転職サービス「リクナビNEXT」では、求職者の閲覧履歴や応募履歴といったビッグデータをAIで分析し、一人ひとりに最適な求人を自動で推薦するレコメンド機能を強化しています。
これにより、求職者は自分の希望に合う求人情報を見逃しにくくなり、マッチング精度が向上しました。
実際、この施策によって求職者の満足度向上と企業の採用効率化を実現しています。
さらに、社内のマッチングにもAIを取り入れることで、担当者の負担軽減につなげることができます。
AIマッチングを導入すれば、候補者の保有スキル・経歴と求人要件との適合度を高速に計算し、優先度の高い組み合わせを提示できます。
人間の手では見落としていた潜在的なマッチも発見できるため、紹介漏れの防止にもなります。
AIを活用したマッチングは担当者の主観に頼らない客観的なマッチング判断を可能にし、ミスマッチによる機会損失を減らしつつ、マッチング担当者の作業負荷も大きく削減します。
人材サービスを利用するクライアント企業にとっても、紹介された人材が的確に活躍できる可能性が高まり、サービス品質の向上につながるでしょう。
ステップ4:面接・選考調整の効率化

面接日程の調整や選考プロセス管理も、営業担当者の頭を悩ませる業務です。
候補者と企業双方の都合を確認し、日程を調整して面接をセットする作業は、メールや電話の往復になりやすく時間がかかります。
DXによって、こうした面接調整業務も効率化が可能です。
一つは、日程調整ツールやカレンダー連携の導入です。
候補者がオンライン上で空いている日時を選択できるシステムを用意すれば、担当者が間に入って何度もやり取りをする必要が減ります。
自動リマインドメール送信などの仕組みも加えれば、面接前日の確認連絡といったフォローも自動化できます。
さらに、オンライン面接の活用も重要です。
昨今のリモート技術の普及により、Web会議システムや専用のビデオ面接プラットフォームを使った遠隔面接が一般化しました。
弊社ではオンライン会議ツールと、AIを導入し求職者との面談記録を自動で生成できるAIを導入し、それを顧客管理システムと連携させ、議事録のアップロードまで自動化しました。
求職者は自宅などから好きな時間に面談を受けることができ、AIによる表情分析などで適性や能力を多面的に評価することが可能です。
これにより、採用担当者(営業担当者)の負荷軽減と採用の質向上を両立しています。
このように候補者との接点をデジタル上に作り、自己完結できる範囲を増やすことで、面接日程の調整にかかる担当者の手間を大幅に削減できます。
ステップ5:契約手続き・入社後フォローのデジタル化

最終ステップは、内定後の契約手続きや入社後フォローのDXです。
これまで、人材紹介・派遣の契約関連業務は紙の書類と対面・郵送手続きが中心でした。
例えば、有料職業紹介では労働条件通知書、派遣では派遣契約書や雇用契約書など、多くの書類を用意し双方で交わす必要があります。
従来は法規制上これら書面を紙で交付する義務があったため、どうしてもペーパーワークと人的チェックが発生し、担当者の負担となっていました。
しかし、近年の法改正によって労働条件の明示をFAX・メール等で行うことが可能となり、2021年1月の労働者派遣法改正により、派遣契約書の電子化が認められるようになりました。
これにより、クラウドサインなどを活用した電子契約を導入する人材会社が増えており、契約事務手続きに要していたマンパワーの大幅な削減や契約書管理の省力化が実現しつつあります。
具体的な事例として、短期派遣サービスに強みを持つフルキャストホールディングスでは、求人の発注から雇い入れ、勤怠管理から給与支払いまでのプロセスをすべてオンラインで完結できる仕組みを整備しています。
クライアント企業はWeb上で派遣スタッフの発注・契約手続きを行い、派遣スタッフ側もWeb上で契約手続きを済ませられるうえ、勤務実績の報告や給与の受け取りもリアルタイムに行える環境が提供されています。
このように契約関連のフローをデジタル化することで、煩雑な事務処理が簡素化され、企業・求職者双方にとって利便性の高いサービスとなっています。
また、契約・入社後の事務処理には繰り返しの定型業務が多いため、RPAによる自動化効果が大きい領域です。
例えば、総合人材サービス大手のパーソルグループではRPA導入を全社的に推進し、請求書の作成・送付やWebサイト・基幹システムからのデータ取得、派遣契約の更新・終了処理といった業務を次々とソフトウェアロボットに置き換えました。
最後に、入社後のフォローもデジタル化で効率アップが可能です。
例えば、就業中スタッフへの定期的なヒアリングも、オンライン上でアンケートフォームを送信して回答してもらう形にすれば、電話で一人ひとり状況確認する手間を減らせます。
回答データを蓄積しテキストマイニングすれば、離職兆候の早期発見やサポートが必要な人物のアラートも自動化できます。
求職者・就業者との関係構築は重要ですが、手法は必ずしもアナログである必要はありません。
デジタルツールを介してタイムリーかつ継続的にコミュニケーションを図ることで、フォロー業務も省力化と質の向上を両立できます。
DX導入による効果と今後の展望

以上、営業担当者の業務フローに沿ってDXのポイントを見てきました。
最後に、デジタル化によって得られる主な効果を整理します。
- 業務効率の飛躍的向上: RPAや自動化ツールで定型業務を機械に任せることで、人手による作業時間を大幅短縮できます。実際、求人票作成や問い合わせ対応を自動化することで従業員の生産性が大幅に向上した事例があります。
- サービス品質と成約率の向上: ルーチンワーク削減により営業担当者は企業への提案や求職者へのキャリアアドバイスなど付加価値の高い業務に集中できるようになります。その結果、きめ細かな対応や質の高いマッチング提案が可能となり、顧客満足度や内定率の向上につながります。
- ミス削減・精度向上: 人の手による入力ミスや伝達漏れが減り、常に最新情報に基づいた対応ができます。求人票の自動作成により誤記載が減り精度が向上したケースや、AIマッチングでミスマッチを防いだ例に見られるように、デジタル化は精度向上にも直結します。
- 候補者・企業双方の満足度向上: 応募から入社までのプロセスがスピーディーかつシームレスになるため、待ち時間や手間が減り求職者の満足度が高まります。
企業側も必要な人材をより迅速に確保できるようになり、リピートや信頼関係の強化につながります。マンパワーグループのようにデジタル接点を増やすことで求職者のサービス利用促進につなげた例もあります。 - データ活用による戦略強化: 業務のデジタル化によって蓄積されたデータを分析することで、新たな洞察が得られます。
たとえば、ビズリーチでは膨大なデータ分析により法人営業の提案精度を高め、受注率向上につなげています。このようにデータドリブンな経営判断が可能になる点もDXの大きなメリットです。
人材業界におけるDXはまだ発展途上ですが、今後AIやクラウド技術の進化とともにさらに加速していくでしょう。
競争の激しい市場環境で生き残るには、属人的な業務から脱却しデジタルの力を最大限活用することが不可欠です。
現場の営業担当者にとっても、煩雑な作業から解放され本来のコンサルティング業務に注力できる環境は働きやすさにつながり、人材定着や組織力強化の面でもプラスに作用します。
DX導入は一朝一夕には進みませんが、できるところから一つひとつデジタル化を進め、営業プロセス全体を洗練させていくことが重要です。
営業支援の次なる一手:マーケティング業務自動化
属人的な業務をデジタル化し、営業効率を高める取り組みを進めていく中で、さらに注目したいのがマーケティング業務の自動化とノーコードツール連携による効率化です。
例えば、問い合わせフォームからの応募情報を自社データベースに自動登録し、即座に社内チャットで担当者へ通知するといった一連のプロセスも、ノーコード連携ツールを使えば人手を介さずに実現できます。
実際、社内にあるあらゆるSaaSやクラウドサービスを柔軟に接続し、「人が行わなくて良い作業の自動化」を支援するサービスも登場しています。
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